2015年 アドテクノロジー業界を振り返り

年末年始で海外のアドテクノロジー系上場企業のIRを中心に資料をまとめました。今回のコラムではそこから得た私自身の考察を記載いたします。

海外アドテク上場企業IRまとめ

1)モバイル注力こそが成長戦略の柱

2014年から言われていることなので特段新しいテーマではありません。しかしながらわかっていても出来ないのが既存の得意分野から新領域へ乗り換えることです。(※売上構成比でもモバイルが30%くらいはまだまだ普通。)海外アドテクで上げている企業は上場企業なので5−10年選手(設立からの年数)がほとんどです。つまりiPhone(スマホ)重視以前に立ち上がっておりますので、これまでの成長の土壌はWeb。そのため広告主・メディアの主要プレーヤーがWebの世界と異なるなど、うまく対応できないようです。この立ち遅れは2014年より深刻さを増しています。facebookが一番、スマホおよびアプリの市場規模拡大の恩恵を受けています。

2)モバイル業界の中でもアプリ広告主の獲得で差が。

スマホ・アプリの広告枠への出稿規模が大きいのはゲームを中心としたアプリ広告主です。15年で言えばGameOfWarのMachineZoneの広告予算を取り込んだ企業とそうでない企業では、業績に雲泥の差が出たようです。MillenialMediaがモバイルアドネットワークで唯一上場した企業にも関わらず、良い所を出せないまま買収され非上場になった(つまり失敗)のは、この部分で差が開いたと言い切れます。伸びるアプリ広告主の予算をがっつり穫れていたらこうならなかった・・・

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3)Web出身のアドテク企業の行く末

DSP/SSPが特に難しい時期に立たされています。アドテクは名のごとく既存広告業界を狙い撃ちにして技術でがっさりビジネスを奪うことをコンセプトに立ち上がった業界です。そのため、広告主・メディアへの営業も既存のブランド広告主、メジャーなメディアが中心だった。しかし、ここ数年勢いを伸ばしているのは広告主では、モバイルに事業ドメインを置く企業、メディアもBuzzfeed,VICEなどサードパーティの広告に頼らないメディアです。広告主・メディア双方の急成長・急拡大プレーヤーをうまく取り込めないところに苦しさがにじみ出ています。15年でうまく成長分野のリソースはを取り込めなかった企業は、今年に大きな勝負に出る必要があります。うまくいかないと、MillenialMedia同様、さらに大手のプレーヤーに取り込まれるでしょう。

4)モバイルも次のテーマに移行するなか、アドテク事業者に求められることは?

【広告主構成の変化に対応】アプリ広告主が主たる出稿主としてモバイル広告業界を伸ばすのも踊り場です。今後はブランドおよびWebに出稿していた広告主がさらにモバイルへ移行し、稼働広告主の構成比%は変わるでしょう。この潮目の変化でうまく需要を取り込むことが、アドテクプレーヤーの今年の一つの機会でしょう。

【メディア向け】アドブロック対策、サードパーティーの広告配信に頼らないメディアの成長が、広告業界を大きく揺さぶります。BUZZFEEDなどはコンテンツ配信ではfb、TWなどのソーシャルメディアと連携していますが、広告の営業・企画・制作・配信は自社で管理しています。この活動により広告ビジネスへの管理能力を高め、さらにユーザビリティの向上などユーザメリットも引き出しています。このことはアドテク事業者からすると自社のサービスがソリューションになっていない、見捨てられていることを意味していますので、自社の戦術・サービス・テクノロジーを改めていかないといけません。

【次なる目新しいソリューションを】アドテク業界も、広告効果・広告収益の改善・最大化をこれまでの延長線上でやっていく難易度は高く、成長重視の選択肢としてはよろしくないと考えています。既存のソリューション、優良なサービスである程度は改善されており、さらに良くしますとしてもそれは例えば200%改善とはいかないのではないでしょうか。であれば売上も200%の伸びを記録しにくい。一つの視点として「効果改善」ではなく、顧客の事業によりしっかり入っていけるソリューションを顧客の既存領域ではなく、「新規領域」で提供するということです。新規領域は顧客にとっても未知で信頼できるプレーヤーと乗り出したいという要求があります。既存分野は自社の重点分野・事業の柱としての位置づけなので外様には任せづらい。より深い付加価値をどう提供するか、改善ではなく、創造に軸点を置きたい。顧客と一緒にリスクをとって、未開の分野を切り開く発想・戦略と実行が求めらているように思います。急成長を期待しながら、改善だけで伸ばすのは心もとない市場・競争環境です。やるしかないのでしょう。過去の勝ちパターンの焼き増しは限界です。

 

 

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